消化性潰瘍 Peptic ulcer
主な原因
消化性潰瘍(peptic ulcer)は食べ物を分解する働きをもつ胃酸や消化酵素が胃や十二指腸の壁を傷つけてしまうことによって起こる病気で、胃潰瘍(Gastric ulcer)と十二指腸潰瘍(Duodenal ulcer)を合わせて消化性潰瘍と呼びます。消化性潰瘍の主な原因は、胃の粘膜に感染したヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)菌であることがわかっています。ピロリ菌に感染すると胃や十二指腸の粘膜に炎症を起こしたり、粘液が減少することで、粘膜が胃酸によって傷つきやすくなり、潰瘍ができやすくなります。最近では衛生環境の改善や除菌治療が行われるようになり、ピロリ菌の感染率は低下傾向となっていることから、ピロリ菌が原因とされる消化性潰瘍の頻度も減ってきています。一方で、高齢の方などアスピリンやロキソプロフェンなどの非ステロイド系消炎鎮痛薬を長期的に服用されている方に起こる薬剤性潰瘍が増加傾向にあります。
主な症状
主な症状は上腹部(みぞおちのあたり)の痛みが多くみられますが、背部痛、食欲低下、嘔気、胸やけ、胃もたれなどの症状がみられることもあり、全く症状がなく健康診断で偶然みつかることもあります。特徴的なのは、潰瘍ができる部位によって症状が異なり、胃潰瘍の場合は食後に痛みを感じることが多く、食事を摂りすぎると痛みが続く傾向にあることに対して、十二指腸潰瘍の場合は空腹時や夜間に痛みを感じることが多く、食事を摂ると痛みが治まる傾向にあります。重要な合併症として、潰瘍部位からの出血、潰瘍部位の穿孔があり、強い腹痛や吐血・下血など、症状増悪時には速やかに専門医の治療が必要です。
検査と診断
消化性潰瘍が疑われた場合には内視鏡検査を行います。内視鏡による観察でピロリ菌が感染している胃炎であることを診断し、その後感染しているかどうかの検査を行うのが通常です。診断方法には尿または血液中のピロリ菌に対する抗体検査、ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素の働きを調べる尿素呼気試験、糞便中の菌を検出する便中抗原検査があります。除菌後の評価は治療後2-3か月経過してから尿素呼気試験や便中抗原検査を行います。
*当院では内視鏡検査は実施できませんので、検査が必要と考えられた患者さんは近隣の検査可能な施設をご紹介致します。
治療
基本的な治療は、胃酸の分泌を抑えたり、胃粘膜の防御機能を高める薬剤を使用します。通常は服薬開始後6-8週間で治りますが、ピロリ菌の感染があると再発しやすく、胃癌の原因になることが知られていますので、感染が判明した段階で除菌治療を行うことが勧められます。除菌治療は保険診療で行うことができます。胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(タケキャブ®、タケプロン®、パリエット®など)と2種類の抗菌薬(アモキシシリン+クラリスロマイシン)を7日間内服します。除菌成功率は70-90%程度ですので失敗する可能性もあります。その時には2回目の除菌として抗菌薬の種類をメトロニダゾールに変更してさらに7日間行います。2回の除菌でほぼ成功すると考えられますが、失敗した場合3回目以降は保険適応外となります。
<日本消化器病学会ガイドラインより一部抜粋>