感染症内科 Infectious Diseases
様々な感染症や不明熱は勿論ですが、特に輸入感染症(海外渡航関連疾患)・寄生虫感染症は最も得意とする領域で、年間100例以上の患者さんが受診されますので、ご不安なことがあればまずはご相談下さい。入院はできませんが、大学病院の感染症科長であった院長が専門診療を行います。HIV感染症・性感染症も専門領域であり、ご希望があれば即日で検査結果をお知らせできます。
院内感染対策について
当院は感染症内科を専門とする無床診療所です。限られたスペースでありながらも大学病院の感染管理部長であった院長が、2019年の開院時よりいかなる感染症患者さんにも対応できるように入口に直結した隔離室など、動線を明確にした空間的ゾーニングを考慮した設計をしております。
さらに発熱患者さんは勿論のこと、他の疾患の患者さんもいつでも安心して受診していただけるように、現在は完全予約制とした時間的ゾーニングも徹底し、施設ではセンサー型アルコール消毒器機、事前WEB問診システム、カード決済システム、セミセルフレジシステム等を導入しております。またスタッフには大学病院と同様の感染対策指導を行っておりますので、どうぞ安心してご来院下さい。
但し、直接ご来院いただくことは避けていただき、当日でも必ずお電話をいただき来院時間をご指定下さるようご協力をお願い致します。
・感染症迅速検査
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
COVID-19症例の概要(2020.3~2021.9)
新型コロナウイルス感染症の診療状況
国内で初めて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が確認されてから1年が経過した。これまで多くのデータ解析や症例報告が公表されてきたが、プライマリケアを担う診療所における実態、すなわち軽症者についての情報は多くない。当院は帰国者・接触者外来と同様の機能を有する医療機関として、発生当初からCOVID-19患者の受け入れを積極的に行ってきたことから、自験例についての概要をまとめてみたので報告する。発生当初から疑い症例も数例受診していたが、当時はPCR検査のハードルが高かったことから、確定診断に至った症例は2020年3月中旬からであり、2021年1月末までに65例の確定症例を診療した。年齢層は6歳から72歳までで、10歳未満4.6%、10代7.7%、20代18.5%、30代32.3%、40代9.2%、50代18.5%、60代以上10.8%であった。検査数は889件で行政検査を含む公費によるものが357件、自費によるものが532件であった。当院はトラベルクリニックでもあることから、2020年5月頃から海外渡航者のCOVID-19関連検査証明書発行のために自費検査の需要が急増した経緯がある。検査陽性率は行政検査のみを実施していた2020年3〜4月は30〜40%であったが、自費検査も含めた5〜11月までは10%未満を推移し、検査数が急増した12月および2021年1月は12%程度になった。診察の結果、保険適用外と判断した受診者も含め、自費検査で陽性になった者はひとりもいなかった。臨床症状は、検査体制が整っていなかった2020年夏頃まではインフルエンザ様の高熱を主訴として受診する患者が圧倒的に多い印象があったが、検査が容易にできるようになった秋以降では発熱のない患者も散見されるようになった。全期間で37.5℃以上の発熱がみられた患者は37例(56.9%)であったが、1日のみの発熱で受診時には解熱していたような患者が秋以降に目立つようになった印象がある。COVID-19に特徴的な味覚・嗅覚異常がみられた患者は20例(30.8%)であり、約半数(16.9%)がそれのみであった。全く自覚症状がなかった患者は13例(20.0%)であったが、すべて患者家族などの濃厚接触者であった。また全例に対して詳細な聞き取りを行った結果、感染経路がある程度特定された事例は62例(95.4%)で、会食26例(40.0%)、同居者20例(30.8%)、職場9例(13.8%)、接待を伴う飲食店従業員および役者7例(10.8%)であり、ほとんど外出していない独居者など聞き取りでは感染経路が推定できなかった事例は3例のみであった。(日本医事新報社 医事新報【識者の眼】2021.3.6号より)
新型コロナウイルス感染症の診療状況・続報
本年3月6日号で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の概要を報告したが、それ以降7月頃からデルタ株による大きな流行の波が押し寄せた。東京都では8月13日に国内発生以来の最多の5773人を記録し、都内中心部にある当院でも発熱患者・検査陽性者数が急増した。小児事例も相次いで確認され、これまで多くみられていた家庭内での同居家族からの感染例だけでなく、高熱を主症状とする小児同士の感染例や小児から同居する成人への感染事例も目立つようになった。当院の直近4カ月の検査陽性率は6月:0%、7月:57.9%、8月:55.2%、9月:8.7%、10月:0%だった。SARS-CoV-2核酸検出時のCt(threshold cycle)値が低い事例も目立ち、同時期のCt平均値(中央値)は7月:18.25(17.43)、8月:19.87(20.22)、9月:25.42(24.78)だった。また8月中旬頃までは多くの陽性者がワクチン未接種者または1回のみ接種者だったが、9月以降に受診した発熱患者の多くがワクチン2回接種者で、検査陽性率は激減した。さらに詳細な問診でも、これまで陽性者の多くに共通して確認されていた「多人数・長時間・マスクなしの会話」機会のある受診者がほとんどみられなくなったことからも人々の行動変容が如実に現れていることを実感した。COVID-19が疑われるまたは不安に思っている有症者がまず訪れる診療所でのこのような動向は、公的機関が発表するデータに反映されていると思われるが、第5波が急激に収束に向かった明確な理由は結論づけられていない。しかし、9月以降に受診する多くの患者のワクチン接種率や発熱患者の行動形態の変化を実感するところを鑑みれば、「職域接種などで急速に進んだワクチン接種完了者の増加による集団免疫の獲得」、「急速に拡散したデルタ株による感染者および重症者の増加とその影響による本来入院が必要とされるはずの自宅療養者増加の現状を目の当たりにした都民の不安や恐怖心からくる行動変容」の2つの変化が主要因ではないかと考えている。ただ疑問に思うのは、緊急事態宣言が解除され、行動制限緩和が進んでいく状況であっても、実行再生産数や検査陽性率が上昇に転じることなく1カ月以上持続的に下がり続けていることである。ピーク時には次々と感染伝播が起こっていたワクチン未接種集団の小児同士での感染事例も減っていることや、急激な減少をもたらすほどの行動変容がどれほど持続できるものなのか等を鑑みると、病原体の変化による感染力の低下も収束への影響を及ぼしているのではないかと憶測される。(日本医事新報社医事新報【識者の眼】2021.11.6号より)