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梅毒 Syphilis

 梅毒は性感染症の代表的なもので、スピロヘータと呼ばれる病原体の梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum subspecies pallidum; TP)によって引き起こされる感染症です。「昔の性病」というイメージを持たれる方も多いかと思いますが、確かに幕末の江戸では「瘡毒(そうどく)」と呼ばれ、約半数の庶民が感染していたようです。1940年代にペニシリンが発見されてからは患者数が激減しましたが、2000年以降になって世界的に再び患者数が増加傾向となり、日本では特に2015年頃から報告数が都市部を中心に急増しており、現在最も注意すべき性感染症の一つです。主として性行為または類似の行為によって皮膚や粘膜の小さな傷から病原体は侵入することによって感染し、数時間後には血液を介して全身に散布されて、様々な症状を引き起こします。妊娠中に感染すると胎盤を通して胎児に感染し、先天梅毒を引き起こします。梅毒は多彩な症状を示すために、患者さんは多くの診療科の狭間に置かれてしまい、大きな病院でも専門の診療科がない施設では正確な診断に至らないこともあります。また検査値や病期の評価が曖昧であると、抗菌薬の適正使用が行われずに治療に失敗したり、過剰な治療が行われたりする場合も散見されます。感染症内科は梅毒の正確な診断と治療を行う診療科ですので、どうぞ安心してご相談下さい。

梅毒の経過

第1期梅毒

 感染の機会があってから3週間程度で病原体の侵入部位である感染局所に軟骨のような硬さを持つ硬結(しこり)ができてきます。これを初期硬結と呼びます。その後周囲の浸潤が強くなって盛り上がり、中心に潰瘍(くぼみ)ができます。これを硬性下疳(こうせいげかん)と呼びます。初期硬結や硬性下疳は痛みなどがなく、治療をしなくても数週間で自然に消退してしまいます。男性では亀頭部、冠状溝、包皮など、女性では大小陰唇、子宮頸部などにみられますので、女性では見つけにくいかもしれません。梅毒血清反応はこの時期以降に陽性となりますので、検査のタイミングは専門医と相談する必要があります。この時期に鼠径部(また)のリンパ節が腫れることもあります。

第2期梅毒

 感染の機会があってから3か月程度経過して、皮膚・粘膜の発疹や発熱、倦怠感、リンパ節腫脹など全身の症状が出現します。この時期の発疹は多彩で、体幹を中心に顔面、四肢などを中心にみられる淡い紅色の皮疹(梅毒性バラ疹)、手のひらや足の裏にみられる赤褐色で一部の皮がむけたような皮疹(梅毒性乾癬)、小豆大からエンドウ大の赤褐色の皮疹(丘疹性梅毒疹)などがあります。全身の症状や皮疹が出現するので、この時期に診断されることも多いと思われます。脱毛がみられることもあります。第2期も治療をしなくても数週間で自然に治ってしまいます。第2期の症状が消退すると前期潜伏期となります。潜伏期が始まって2-3年は2期の症状が再燃することがありますが、その後は後期潜伏期になり、症状のない時期が数年続きます。

第3期梅毒

 感染後3年以上経過すると皮膚、筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生しますが、この時期になる前に治療が行われることが多いため、みられることは少なくなりました。

第4期梅毒

 感染後10年以上経過した状態です。大動脈炎、大動脈瘤、脳脊髄の障害による脊髄癆、麻痺性痴呆などの症状が出現します。抗菌薬のなかった時代には、3期、4期梅毒に進行して亡くなる患者さんも少なくはありませんでしたが、現代ではほとんどみられなくなっています。

無症候性梅毒

 臨床症状がなく梅毒血清反応が陽性の場合を無症候性梅毒と呼びます。感染の機会から1年以内を早期潜伏期、それ以降のものを晩期潜伏期とされています。

梅毒の検査

 病巣部からの病原体の直接検出または血液検査で診断します。梅毒血清反応にはRPR(Rapid plasma regain)法に代表される脂質抗原検査(STS; Serologic test for syphilis)TPHA法に代表されるTP抗原検査の2種類があります。脂質抗原検査は感染機会があってから2週間程度してから陽性となり、12週程度で前例が陽性になるといわれており、適切な治療が行われると陰性化します。ただ他の感染症や膠原病などで偽陽性になることがあり、生物学的偽陽性(BFP; Biological false positive)と呼ばれます。TP抗原検査ではBFPはありませんが、治療をした後も陽性が持続します。当院では即日検査も実施しておりますが、正確な診断・治療のために外注検査を併用することをお勧めしています。

梅毒の治療

 ペニシリンを第一に選択します。第1期では4週間、第2期では8週間、第3期以降では12週間を必要とします。無症候性梅毒では抗体価の程度によって治療をするかどうかの判断をします。治療が始まってから少なくとも6か月以上は抗体価の推移を確認して効果判定を行います。

<日本性感染症学会誌 性感染症 診断・治療ガイドライン2016より抜粋>

 

梅毒リーフレット(PDF)

(日本性感染症学会、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本臨床微生物学会)

 

 

 

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