不眠症・睡眠障害 Insomnia / Sleeping disorder
不眠症(Insomnia)とは、寝つきの悪い「入眠障害」、眠りが浅く何度も目が覚める「中途覚醒」、朝早くに目が覚めてしまう「早朝覚醒」、ぐっすりと眠れたという満足感が得られない「熟眠障害」など、睡眠に関する問題が1か月以上続き、日中に倦怠感、意欲低下、集中力低下、食欲低下などの体調不良を自覚する病気です。原因は多岐にわたるためにそれぞれに応じた対応が必要となります。不眠状態が続くと不眠恐怖感からさらに眠れなくなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。通常はどこの医療機関でも睡眠薬を処方してもらえますし、薬効によって改善してしまえば大きな問題はありません。しかし長期に及ぶ場合には的確な診断がなければ的確な治療も行うことができません。
不眠症の定義
(1)患者または養育者から以下の一つ以上の報告がある
- 入眠困難
- 睡眠維持困難
- 望ましい起床時刻より早く目覚める
- 適切なスケジュールで就寝しようとしない
- 養育者の介入なしに睡眠が困難
(2)夜間睡眠障害に関連して以下の一つ以上の報告がある
- 疲労または倦怠感
- 注意力、集中力、記憶力の低下
- 社会生活上あるいは職業生活上の支障、または学業低下
- 気分障害または焦燥感
- 日中の眠気
- やる気、気力、自発性の減退
- 職場または運転中に過失や事故を起こしやすい
- 睡眠の損失に相応した緊張、頭痛、胃腸症状が認められる
- 睡眠について心配したり悩んだりする
(3)眠る機会や環境が適切であるにもかかわらず上記の睡眠覚醒障害がある
(4)上記の症状が週に3回以上ある
(5)3か月未満を短期、3か月以上を長期とする
(6)ほかの睡眠障害でうまく説明されない
診断
上記はあくまで定義ですが、不眠の原因が他の病気によることも少なくはありません。例えば、うつ病では不眠症状は高頻度にみられ、抗うつ薬を使用しなければ根本的な治療にはなりません。また、痛みや痒みによる不眠であれば症状を和らげる薬が必要となりますし、心臓病や呼吸器系の病気であればもとの病気に対する治療の見直しも必要となります。さらには現在服薬している薬の副作用によって不眠症状が出ている場合も考えられます。現在治療している病気があり、複数の薬を飲まれている方は、睡眠薬の使用に関して主治医とよく相談する必要があります。
治療
現在日本の医療機関で主に用いられている睡眠薬には、①ベンゾジアゼピン系睡眠薬、②非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、③メラトニン受容体作動薬、④オレキシン受容体拮抗薬があります。効果は薬剤間で大きな差はありませんが、効果発現までの時間や作用時間の長さは異なり、長短時間作用型、短時間作用型、中間作用型、長時間作用型に分類されます。一般的には不眠症のタイプによって適切な睡眠薬を選択します。睡眠薬は単剤使用が原則であり、効果が不十分な場合に複数の睡眠薬を併用することによる有効性には科学的根拠はありません。むしろ副作用を低減するためにも多剤併用は避けるべきです。代替療法としてはメラトニン受容体作動薬や催眠鎮静性抗うつ薬、認知行動療法などの併用が選択肢としてあげられます。不眠改善効果の減弱に関しては、作用時間の短い薬剤ほど早期に出現しやすく、効きにくくなる(耐性形成)程度はメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬が少なく、非ベンゾジアゼピン系に比べてベンゾジアゼピン系が多いといわれています。高用量、長期間にわたる服用は依存性形成のリスクが上昇しますので、不眠症状が改善すれば状態に応じて常用を頓用に変更、徐々に減らす、服薬をお休みするなどの対応を検討すべきです。但し、自身の判断で中止してしまうと離脱症状が出現することがありますので、必ず医師の指示のもとに行ってください。
良好な睡眠を得るために
- 定期的な運動をしましょう
- 寝室環境を整えましょう
- 規則正しい食生活を送りましょう
- 就寝前に水分を摂りすぎないようにしましょう
- 就寝前にカフェインを摂らないようにしましょう
- 就寝前の飲酒は逆効果です
- 就寝前の喫煙は避けましょう
- 寝床での考え事はやめましょう
<日本睡眠学会 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインより抜粋>
*「朝早く目が覚める「早朝覚醒」とは?症状や原因、対処法をわかりやすく紹介」(WENELL監修記事)
*「新型コロナウイルス・睡眠への影響」(SHING監修記事)